133キロ怪速球 / 山本 昌
プロ野球の世界では地味な存在ではあるけれど、れっきとした200勝投手。しかも44歳でまだ現役で頑張っているのが、中日ドラゴンズの山本 昌(やまもと まさ)投手です。だからこそボクにとっては心の師匠的存在の人なのです。でも、プロ生活26年目の今シーズンは活躍の場面が少なく、クライマックスシリーズの登板もついにありませんでした。
クライマックスシリーズ(2ndステージ)ではジャイアンツに1勝4敗で敗退したドラゴンズですが、シリーズの勝敗の行方を分けた場面は第3戦にあったとボクはみています。この試合、それまで4対2でリードしていたドラゴンズは8回裏からセットアッパーの浅尾を投入。しかし、肝心な場面で若さが出た浅尾は制球を乱し、ついに逆転を許してしまったのです。脇谷のタイムリーなどで3点を奪われ、結局そのままゲームセットに。勝てば2勝2敗のタイに持ち込めたこの試合を落としてしまったのがドラゴンズにとっては致命的でした。
「こんな時、マサさんがいてくれたらなぁ。」というのが、その時のボクの偽らざる心境でした。仮に本人がベンチ入りしていたとしても、おそらくあの場面で登板することはなかっただろうけど、もしあの時、マサさんのように制球力がよく、マウンド度胸のすわったセットアッパーがいてくれたら。。。なんて思うと残念でなりません。
山本昌といえばスクリューボールが代名詞。これはプロ5年目に留学先の米国マイナーリーグで習得したものです。彼はこの球種を武器に20年以上プロの飯を食ってきたと思われています。さぞやこれまでスクリューボールに磨きをかけるために苦心してきたのだろうと思いきや、意外にそうでもなさそう。本人のこだわりはむしろストレートにあるようです。
マサさんがこだわる「見逃し三振をとれるピッチャー」の真骨頂は、やはり速球なのです。だから「全力で投げて133キロが出なくなったら、引退する」と口にしたこともあるんだそうな。自身の経験則から、最低限このスピードと制球力さえあればストレート勝負ができるからというのがその根拠らしいです。浅尾は確かに150キロの速球を放れるけれど、マサさんの説に従えば、そんなスピードボールよりもむしろ制球力を磨くことが今後の課題でしょう。
他にもワインドアップ投法やグラブを顔の前で構えるセットポジションなど、マサさんの投球技術に関するこだわりには独特なものがあります。入団しばらくは鳴かず飛ばずで解雇寸前だった彼が26年間もプロの世界で生きてこられたのは、しかも200勝投手という非凡な成績をあげることができたのは、技術に関する飽くなき探求心があったからなのだろうと容易に想像できます。
マサさんは著書のなかで、今季限りで現役を引退する立浪選手を引き合いに出しながらこんなことを語っています。
わがドラゴンズには立浪和義という偉大な打者がいる。…経歴は、まさしくエリートと呼ぶにふさわしく、僕と比べるまでもないのだが、体格には決して恵まれていない。…遠くへ飛ばすパワーの持ち主でもないのだが、今の自分に何が必要か、何が足りないかを的確に分析するという点では、すばらしい感覚の持ち主だ。
…一生懸命に練習に取り組みながら、芽の出なかった選手も少なくない。その差は紙一重なのだろうが、違いがあるのだとしたら「鏡」の有無、もしくは「自己分析力」といい換えてもいいと思う。
…まず、その仕事を好きになること。好きでやれば、しがみつこうという執着心がわき起こる。入団したころに、ある先輩は僕にこういった。「まじめにやっても、うまくはならないぞ」今はやっておいてよかったと思っている。向上心を忘れずに、僕はやってきた。
「自己分析力」「執着心」「向上心」。これまで山本昌を一流のプロ野球選手たらしめてきたものから、ボクら一般人が学ぶべきことはたくさんあると思います。一日でも長く現役であり続けるために。プロであれ普通のサラリーマンであれ、レベルの違いはあっても、問題意識は共有できるでしょう。
今年もドラゴンズは日本シリーズ進出を果たせませんでした。そして、マサさんが野球人生を終えるまでに必ず成し遂げたいと考えている目標も、また果たせないまま残ってしまいました。それは「日本シリーズで勝つこと」。すでにプロ野球の世界で功成り名を遂げたマサさんですが、まだ日本シリーズでは「未勝利」なのです。これまで4回シリーズに出場し、5度先発しているというのに。。。
この目標をクリアするには相当高いハードルを超えなければなりません。まずチームがクライマックスシリーズを勝ちあがること。しかもマサさんが日本シリーズで登板するには、シーズン通じて戦力であり続ける必要があります。年齢からみても残されたチャンスは多くありません。でももし来シーズン、マサさんがこの目標に挑戦するチャンスを手にすることができたら、ボクは何としてでも「その瞬間」を見届けたいです。
きっとマサさんは、「正しい努力」が結果につながることを、身をもって証明してくれることでしょう。
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