ただのイチャモン
こうなるとただのイチャモンとしか思えない。庶民派を印象づけようとタクシー業界や大手スーパーマーケットを視察して回った麻生首相に、記者団が「連日連夜の高級料理店やホテルバーでの会合は庶民感覚からかけ離れているのでは?」と追及すると、首相は「ホテルのバーは安い」と応じた一件がたいそう話題になっている。アホか、こんなこと公器を使って報道するようなことじゃないだろ?先週、ネットでニュースを閲覧していると、やたらとこの関連記事が目について気分を害した。
麻生さんとしては、丁寧に応じようとして墓穴を掘っただけのことだ。本音では「ええ、毎日贅沢してますが支払は自分でやってます。それが何か?」とでも答えたかっただろうに。記者にすればしてやったりの気持ちだったのだろう。「化けの皮をはいでやった」くらいのことを思って得意な気分になったかもしれない。それが証拠に、このエピソードはまたたく間にマスコミに大きく採りあげられた。でも最近、何とかして政治家の失言を引き出してニュースにしたいというマスコミサイドの思惑がどうも鼻に付いてならない。まぁ、大阪の橋下知事が過激な発言でさかんに話題を提供しているから味をしめたのだろう。
ところで、そもそも首相は庶民と同じ生活をしなければいけないのでしょうか?もしそうでなければいけないのだとすれば何故?ボクが思うに、「ホテルのバーは安い」は一国の首相クラスの人間だったらむしろ常識的な感覚なのだろうと思う。むろん庶民的ではない。麻生さんは元々ハイソな生まれで会社社長もやっていた人だから、庶民とははなから感覚が違う人だし、取材の最前線にいる番記者なら当然わかっているはずだ。だからこんなくだらない質問をあえてすることがいやらしいのだ。これは失言をあげつらう目的の誘い水であり、とても下品な行為だ。そこまでしてネタが欲しいのかとも思う。欲しいのだろうな、きっと。
人のあげ足をとるような取材、あらかじめ用意した筋書きに沿って行う誘導尋問のようなインタビュー、今回のような他愛もないエピソードを大きく採りあげる一方で、肝心なことはうやむやな報道でごまかしてしまう態度。いつの間に日本のマスコミはこれほどまでに堕落してしまったのだろう。かつてのメイン・カルチャーがサブカルに堕してしまったような、かつて絶対的なチームのエースだった投手が敗戦処理の役目を負わされているような、情けない気分にさせられることが最近とても多い。今のマスコミは、健全な世論を喚起するという本来の役割を果たせていない。
首相は庶民とは違う。だからこそ庶民と違う生活をする首相が庶民の生活を知ろうと視察をおこなうことは大事なことだ。そういった行為はエセとか偽善とは違う。一国の政治を預かる者としてあるべき態度だと思う。たとえそれがパフォーマンスだと揶揄されようとも(件の記者はパフォーマンスだと揶揄したいのだろうが)。では、庶民の台所を視察した政治家が高級料理店で食事をしていたら庶民派を名乗ってはいけないのか?これもおかしな話だ。セレブの暮らしぶりも庶民の暮らしぶりも幅広く知っていなければならないのが政治家の仕事だろう。国民のあいだにはさまざまな社会的階層があるのだから、我が国の各階層の現状をあまねく把握しているのが理想だろう。そういう意味では麻生さんは庶民派を名乗っても許される政治家だとボクは思っている。さらに言えば、プライベートのナイトライフについてあれこれ勘ぐるような真似は下衆のやることであり、件の記者も我が国のエリート階級の一翼を担っているというプライドがあるのなら、分別をわきまえて取材したほうがいい。セコい根性で三文記事を求めてはいけない。
庶民のボクは思う、「ホテルのバーは決して安くない」。でも、首相という立場の人には庶民感覚だけを売りにして政治をやってもらいたくない。庶民もマスコミの言いがかり的な政府批判に軽々しく同調してはいけない。野党の政治家の皆さんも、安っぽい社会正義を振りかざしてライバルの足を引っ張ろうとする言動は、素人くささを醸し出してマイナスですよ。一国を担う政治家として、真面目にコメントすべき話題なのか、そうでないのかくらいはちゃんと判断してくださいな。いくら野党だからといって、政治を貧相なポピュリズム(大衆迎合主義)に陥れてはいけません。
最後に念のため。ボクは今の自民党は嫌いです。麻生首相も特に好きな政治家ではありませんので悪しからず。
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