2012年1月22日 (日)

Here goes! / 山崎史子

Here_goes1 日本では、日常のなかでヴィブラフォンという楽器を耳にする機会はまだまだ少ないのではないでしょうか。ボクはジャズが好きでかれこれ四半世紀ほど愛聴しているので、ヴィブラ(本当は「ヴァイブ」という略称があるのですが、これだと下世話な道具をイメージする人が多いようなので、ボクは使いません。困ったものです。)もよく聴きますが、ふだん音楽と言ってもスーパーマーケットやカフェのBGMくらいしか耳にすることのない人にはなじみの薄い楽器かもしれません。

 「鉄琴(てっきん)みたいな楽器」って説明すれば最も手っ取り早いでしょうか。でも、これではヴィブラフォンという楽器の魅力を的確に伝えるには言葉足らずな気がします。

 鉄琴は金属の板がピアノの鍵盤のように並んでいるものを、先端を毛玉のように丸くしたマレットと呼ばれるバチで叩く楽器ですが、それだけでは鋭く硬い音が出るにすぎません。ヴィブラフォンはそうやって出した金属音を共鳴させてふわっとした柔らかい音にするために、金属板の下にファンを仕込んで回しています。だから浮遊感のある持続音が出るんです。

 聴けば聴くほど不思議な楽器です。演奏者によっておなじ楽器でも全く違う音色になります。都会的でクールな音色がジャズのサウンドにマッチするので、やはりジャズ・ライブで演奏されることが多いです。ボクが最初に聴いたのはMJQというジャズ・コンボのアルバム、『コンコルド』でのミルト・ジャクソンの演奏でした。このアルバムでのミルトの演奏を一言で言い表すとすれば「典雅」かなぁ。クラシック音楽を思わせる上品な演奏なんです。

 先日、小布施の蔵を改造した部屋に宿泊したさいにウォークマンでふみちゃんのデビューCD『Here goes!』を聴いてみました。凍えそうな寒気のなかを訪ね、ようやくたどり着けた安ど感からでしょうか、間接照明に照らされた部屋のなかで聴いたヴィブラフォンの音色は不思議と暖かく、まるで暖炉の火にあたっているような心地よさでした。

Here_goes2 吉祥寺stringsでのライブで聴いた「雪譜(せっぷ)」という楽曲では、ふみちゃんのヴィブラフォンが雪景色を見事に表現してました。雪って触ると冷たいけれど、それでかまくらなんかを作ると中はけっこう暖かかったりします。ヴィブラフォンの音色はそれとおんなじで、ある時はクールに、またある時はホットな音色で聴こえてきます。だからオシャレに聴こえたり、聴いていてホッとさせられたりで、生活に彩りを添える音楽としてはいろんなシチュエーションで使える受けの広い楽器だと思います。あんがい聴いている人のその時々の気分を反映しやすい楽器なのかもしれません。演奏者の表現力が試される楽器だともいえます。

 そういう意味でふみちゃんが奏でるこのアルバムの中の楽曲群は、聴く者を元気づけてくれたり、ちょっぴり感傷的にさせてくれたりで、なかなかに味わい深い仕上がりになってます。例えて言うならば喜怒哀楽の「哀楽」かなぁ。

 アマゾンで視聴できるようなので一度聴いてみてください。もっともちょっと聴いたくらいではなかなかその魅力がつかめないかもしれません。ボク自身、何回か聴いているうちにジワジワと良さがわかってきましたから。

  ポップでキャッチーなタイトル曲が1曲目。「Here goes!」からは元気印なふみちゃんの人柄がうかがえますが、ラストの「翁草(おきなぐさ)」のようにセンチで日本的情緒がうかがえる楽曲のほうが、実は彼女の本質を表わしているのかもしれません。どちらもオリジナルです。

 バンドネオンのソロから始まる2曲目の「ドナドナ」は、あの「荷馬車に乗せられた子牛が引かれていく」絶望的な哀しさ…ではなく(笑)、ヴィブラフォンの小気味よい演奏が素敵なアーバンなアレンジになってます。3曲目の「エタニティ」はオリジナル。耳に残る冒頭のリフが印象的なチューンです。ライブで聴いて以来、ボクも大好きな曲です。

 4曲目の「オブリヴィオン」はアルゼンチンタンゴの革命者、アストル・ピアソラの楽曲。ピアノとの絡みが美しく響いていて、どうしようもなく哀しくなっちゃいます。(笑)

 5曲目はアルバムの中で1曲だけ毛色が違うようにも思えますが、アルバム全体に通じる空気感に沿ったアレンジなので、アニメの原曲とはまた違ったひねりの効いたオシャレな「ルパン三世のテーマ」が聴けます。

  6曲目の「元気玉」は、クラシカルなジャズのような熱気、シブさはないけれど、コンテンポラリーなジャズとして爽やかさ、小気味よさ、そして哀感で聴かせるこのアルバムを代表するような曲です。そしてラストは「翁草」。ボク的にはふみちゃんのオリジナルの中でかなり好きな部類の曲です。しみじみと心に沁みてくる名曲だと思います。

 クールでいてホット、爽やかでありながら哀感もあり、陰と陽が織りなす美の旋律を存分に聴かせてくれるこのアルバム。すでにジャズスポットでは相当のキャリアを誇る実力者ですから当然なんだけど、聴く側にとって「名刺代わりの一枚」で済ませるわけにはいかない完成度の高さです。ボクはもう10回以上は聴いたでしょうか。

  ふみちゃんのヴィブラフォン奏者としてのアイドルはゲイリー・バートンだそうですが、彼の「透徹」なスタイルも、ボクのフェイバリットであるカル・ジェイダーの「洒脱」なスタイルもいいけれど、ふみちゃんの個性は彼らとはまた違ったものです。それは日本人女性アーティスト特有の感性からくるものなのかもしれません。

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2012年1月15日 (日)

吉祥寺Stringsでカウントダウンライブ

Photo 昨年末の大晦日は一昨年末に続き吉祥寺のライブスポット「Strings(ストリングス)」でのカウントダウンライブに夫婦で行ってきました。今回は太宰百合(Piano)小島のり子(Flute)とCDデビューを果たしたばかりの山崎史子(Vibraphone)〔以下、ふみちゃん〕の3人でのステージでした。

 大晦日なので3部制のライブの1stステージは午後9時からの予定。でも、ボクらはなぜか8時からと勘違いしていて、7時半にお店に行ったらまだ開いておらず、近くのスタバで時間調整をして再度入店というマヌケなことをしていました。(笑)

 それでも無事席に落ち着くことができ、ここでは必ずいただくカイピリーニャと、前菜の盛り合わせやピザをパクつきながらライブ前の腹ごしらえをしていたのです。すると、さきほどまでステージで楽器の調整をしていたふみちゃんがこちらにやって来て妻に声をかけてくれました。以前ふみちゃんのライブに出かけた際、ウチの妻がふみちゃんのお姉さんに似ているとかで話をしてくれたことを覚えてくれていたんです。

 プロのミュージシャンなのに、いつも気さくで、元気印で、それでいてとっても気遣いをされる方なので、すごく親近感を覚えてしまいます。ステージはそんなふみちゃんのキャラクターが溢れんばかりの魅力を放つ楽しいものでした。曲の合間のふみちゃんと他のメンバーとのMCでは笑い声が絶えず、店内全体が和気あいあいとした雰囲気のなか、素敵な演奏が続きます。

 とっても寛いだ雰囲気のなか、ちょっぴりほろ酔い気分で聴いていたので、セットリストは覚えてないので書けませんが、スティービー・ワンダーの「リボン・イン・ザ・スカイ」やブラジル音楽のナンバーを数曲演奏してくれたのが嬉しかったなぁ。年越し間近に迫った3rdステージでは3人それぞれのオリジナルナンバーを中心に演ってくれたのですが、ご本人も言ってたけど、のり子さんのオリジナル曲「雪譜(せっぷ)」ではフルートとピアノとビブラフォンの音色がとけあって、本当に北陸の雪景色を思わせる幻想的な演奏となり、それが今回一番印象深かったです。

 もともとこの曲はビブラフォンが入る編制ではないんだそうですが、ふみちゃんの演奏からはしんしんと静かに降り積もる真っ白な雪をイメージできました。これで遠くから除夜の鐘なんかが聞こえてくれば、まんま年末恒例の「ゆく年くる年」の世界ですな。(笑)

 これまでフルートをフィーチャーしたジャズライブを聴く機会がほとんどなかったのですが、のり子さんのフルートは想像していた以上に素敵でした。のり子さんには日本酒のイメージを曲にしたアルバム『Song for my sake(ソング・フォー・マイ・セイク)』というのがあるんだそうで、「雪譜」はそのアルバムの中の曲。ほかにも「田酒(でんしゅ)」「浦霞(うらかすみ)」「加賀鳶(かがとび)」など、日本酒好きにはおなじみの銘柄をイメージした曲が収録されているようです。松本の飲み仲間に持っていったら喜ばれそうです。

 百合さんのピアノがこれまた素晴らしく、ライブからの帰り道に妻と感想なんかを喋り合っていて奇しくも一致した意見が「太宰百合さんのピアノは良かったね~」というもの。初めて聴くピアニストでしたが、彼女のピアノはとってもボク好みです。

 ふみちゃんのカウントダウンとともにクラッカーを鳴らし、お店から振る舞われたシャンパンで乾杯する恒例行事を終え、新年一発目に演奏してくれた曲はふみちゃんオリジナルの「散歩道」という曲でした。ビブラフォンの可愛らしい旋律が印象的なチューンですが、百合さんのバッキングがとってもカッコ良くて、これまで聴いたなかでは今回の演奏はボク的にかなり気に入りました。この二人のデュオで、いつかまたこの曲の生演奏を聴いてみたいものです。

  ふみちゃんのMCは相変わらず絶好調で楽しませてもらいましたが、今回は他にもいろんな収穫があったライブでした。もちろんライブ終了後、ふみちゃんから直接『Here goes!〔amazon.co.jp〕を買ってきましたよ、サイン付きで。本人にとっても自信作ということなので、次回このCDのレビューを書くことにします。

 店から出て吉祥寺駅に向かうまでの街中は、さすがに冷え込みが厳しく人通りもまばらで、普通だったらいっきに気分が滅入るほど淋しくなりそうな雰囲気でしたが、その時は妻と二人だったからというのもあるけど、なぜか心の中がほっこり温まっていて足取りも軽かったのを覚えています。今年も良いことがたくさんありますように。。。

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2012年1月 4日 (水)

2012年、新年のごあいさつ

 2012


 新年明けましておめでとうございます

 昨年は世相もそうでしたが、ボク個人も辛いことが多く、あまり良い年ではありませんでした。今年こそはあとで振り返ったとき、「良い一年だったなぁ」としみじみ思えるような年になってほしいものです。皆さんは新しい年のスタート、どんなふうに過ごされましたか?

 このブログ、昨年11月からPCの日本語入力システムの調子がおかしく、書いているうちにひらがな入力ができなくなることがしょっちゅうで、そのうち書くこと自体が億劫になってしまったんです。そんなこともあって1カ月以上更新が途絶えてましたね。

 『日の出工房』はボクが普段観た映画、スポーツ、読んだ本、聴いた音楽、訪れた飲食店やお気に入りのスポットなどをネタに書いていますが、この間、書きそびれたネタがいっぱいあって残念です。

 それでもそのうちのいくつかは近いうちにアップしようとは思っています。なにぶん一昨年に現在の職場に異動してからというもの、ブログを更新する時間が思うようにとれずにいるので、今年もゆっくりペースで続けることになるでしょう。とりあえず年頭の目標としては、週1ペースでの更新を考えています。

 12月2日(金)は猿田泰寛くんのピアノソロ・リサイタルに出かけてきました。これまでは根岸弥生さんとのデュオ(2台のピアノ)で聴くコンサートばかりだったので、実はソロで聴くのは初めてでした。猿田くんが奏でるベーゼンドルファーの心地よい音色を堪能したあと松本の街に繰り出し、久しぶりに「厨 十兵衛」と「WaterLoo(ウォータールー)」をハシゴしてゆっくり呑むことができました。

 23日(金・祝)には松本のとあるお店で、毎年恒例の妻との忘年会。その後はいつものWaterLooでまったりと過ごしました。そして31日(土)は東京吉祥寺のライブハウスに出かけ、昨年に引き続いてカウントダウンライブに参加してきたというのがボクらの年末の過ごし方でした。

 こう書くとなんだか遊び暮らしているように思えるでしょうけど、しんどい状況のなかで一年間頑張ってきた自分(と妻)へのご褒美のつもりです。へへへ。

 さて、年末年始の休日も終わったし、そろそろ本格始動と行きますかぁ~。2012年も仕事に遊びにアクティブであり続けたいものです。

 今年もどうぞよろしくお付き合いくださいませ。

 

 

 

 

 

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2011年11月26日 (土)

Music In You / 西山 瞳

Music_in_you 前作『パララックス』から3年の歳月を経て、今月発売されたニューアルバム、『music in you』。後世には西山 瞳の代表作として語られる作品になっているかもしれない、すでにそんな予感がしている。

 ボクがこれを聴き始めたのは、ほんの10日ほど前のこと。以来、我が家ではヘビー・ローテーション中です。才気ばしった若手ジャズピアニストから円熟期を迎えようとしている中堅ジャズピアニストへ。彼女のキャリアは着実に高みに向かって進んでいるようだ。アルバムに収められた充実の作品群はそのことを如実に物語っている。西山自身のオリジナルな音楽世界の完成度はますます極まってきた。

 こんこんと地下からわき出てくる泉。清らかな小川のせせらぎ。手つかずの自然の中に存在する無色透明な水のイメージが浮かぶ。西山が奏でるピアノの美旋律は現実世界の煩わしさを少しの間だけ忘れさせてくれる。ピアノトリオだからもちろんベースやドラムスのサポートがあってこそなんだろうけど、傑出した楽曲の美しさこそがこの人の音楽の魅力だ。スタンダードナンバーで聴かせるのもいいけど、やはりジャズメンはオリジナルで勝負するのが基本ではないだろうか。

  同アルバムの4曲目、「Unfolding Universe(アンフォールディング・ユニバース)」を初めてネットで試聴した時、ボクの頭の中に衝撃が走った。なんでもポピュラー音楽では定番のコード進行、Ⅱ-Ⅴモーションをほとんど使わずに書いた曲なんだそうだ。この楽曲がアメリカ最大規模の作曲コンペ、「インターナショナル・ソングライティング・コンペティション2009」のジャズ部門にて約1万5000のエントリー中、第3位に入賞した。早くこの曲をアルバムで聴きたい、いや、願わくば生演奏で。そう思い続けてようやく念願が叶った。

 コンポーザーとしての彼女のたぐいまれなる才能には驚かされるばかりだ。昨今はどんな音楽ジャンルであれ、「どこかで聴いたような曲」がうんざりするほどたくさん取り揃えられているし、オリジナリティーのかけらもないような楽曲がなぜかヒットしたりもする。そんな場面に出くわすたびにボクは、よりいっそうオリジナルな音楽を求めずにはいられなくなっていた。

 ファッションのように世間の流行に合わせるようにして次から次へと着散らかすようなものではなく、ましてや人が聴いているから聴いてみようなんてお仕着せなものでもなく、自分の感性によく馴染んだ、聴いて心地良いと思えるものをどうやって探し出せばいいのだろう。つまりボク自身にとっての普遍的かつ本質的な音楽とはどんなものか。。。と。

 どうやら西山の音楽に対する関心もこのへんにあったようだ。以下は西山のブログからの引用。

 20代前半に、世界的な現代美術家の宮島達男さんの作品に出会い、大変衝撃を受けました。そして、宮島さんは「Art In You」という考えと、同タイトルの本も出されていて、それに大変共鳴しました。作品を制作するのはアーティスト本人かもしれませんが、それがアートとして成立するのは、観た人の心に何かが発生し、アーティストと共鳴した時です。前から不思議に思っていました、なんで私たちは何かに感動するんでしょう。親にも先生にも教えられたわけではないけれど、赤ちゃんや子犬を見ると可愛いと思う、それは私たちの心の中に埋め込まれた大事なスイッチで、皆が持っている。芸事を発信する人間は、そのスイッチを押すお手伝いをするだけで、発信するのは芸事そのものではなく、皆と何かを共有したいから発信するのだ、という原理的なことに、宮島さんによって気付かされました。音楽も全く同じだと思い、Music In Youだなあと思い、初めてタイトルから先に作った曲です。

  優れた音楽は聴く人の心の中にある。アーティストとはその音楽を鳴らすスイッチを押す人。であるならば、自分と感性が通じ合うアーティストと息長くつきあってゆくことが幸福な音楽生活を送るための秘訣なのかもしれない。もしかして西山の音楽は今のボクの心情にベストカップリングなのかも。まだ誰も演ってないオリジナルな楽曲であることはもちろん必須の条件だ。

  今回のアルバムの白眉ともいえる4曲目「アンフォールディング・ユニバース」。そこにいたるまでの2曲目「キノーラ」、3曲目「ピクチャーズ」。いずれも人々がアートを目の当たりにするための仕掛けだ。キノーラはアニメーションの始まりとなった動画再生機器の名称なのだとか。この曲の並びもなんだか深い意味が込められているように思える。いずれも西山らしさが楽曲の随所に表れていて趣深い。そんなところも面白い。

 「あなたが本当に聴きたい音楽は、あなたの心の中にある。」西山 瞳の音楽を聴いていると、本当にそうかもしれないと思えてくるから不思議だ。

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2011年11月23日 (水)

勝てなかったのは打撃陣のせい?

 史上まれにみる激戦が続いた今年のプロ野球日本シリーズ。結果はみなさんご承知のとおりソフトバンクホークスが4勝3敗で日本一の栄冠を手にした。中日ファンであり、そして落合野球の集大成を期待していたボクとしては残念な結果に終わってしまったが、シリーズを大いに楽しませてもらった。やはりプロフェッショナルの高い技術レベルを目の当たりにできるゲームは観ていてワクワクする。

 投手を主体とした攻撃野球。この点では両チームとも似かよったチームカラーどうし。毎試合接戦になったのも無理からぬところだ。野球というスポーツは投手の攻撃から始まるものなんだということを改めて実感した。投手が放ってきた球を打者が細いバットでどう受けるか。中日-ソフトバンク戦の勝敗を分けたのはまず、投手の「打たせない技術」だった。

 だから毎試合、今日は誰が先発するのか、どういうタイミングで誰につないでいくのかに注目して観ていた。落合監督、秋山監督それぞれの投手起用をボクなりに予想し、実際の起用がそれとどう違ったのか、さらにその起用の根底にある勝つための方法論は何なのかと思いを巡らすのが楽しかった。

 つい先ごろ出版された落合さんの著書『采配(さいはい)〔amazon.co.jp〕にこんな記述があった。初めはビックリさせられたけれど、落合さんの方法論は理にかなっていると感心し、納得させられた。

 0対1の惜しい敗戦が3試合も続いた。ファンもメディアも「打てる選手がいない」と打線の低調ぶりを嘆いている。この状況から抜け出そうと、チームでミーティングをすることになった。監督であるあなたは、誰にどんなアドバイスをするか。
              (中略)
 恐らく多くの方は、打撃コーチやスコアラーの分析結果も踏まえて、3試合で1点も取れない野手陣に効果的なアドバイスをしようと考えるだろう。
                              (中略)
 私は違う。投手陣を集め、こう言うだろう。「打線が援護できないのに、なぜ点を取られるんだ。おまえたちが0点に抑えてくれれば、打てなくても0対0の引き分けになる。勝てない時は負けない努力をするんだ

Photo このあと、落合監督は3点以内に抑えたピッチャーが「負けたのは悔しいが、自分の仕事はした」なんて報道陣にコメントするようなこれまでの風潮はおかしい。チームスポーツで仕事をしたと言えるのは、チームが勝った時だけだと述べている。一般社会でも同じことだ。あと一歩で仕事(受注)を逃した社員が自分はベストを尽くしたと言い張っても相手にされないだろう。落合さんの思考法からさまざまなことを学ばせてもらった。

              ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 負けた中日はもちろん、勝ったソフトバンクでさえ打ち勝ったという印象はない。ひと試合あたりの得点も第6戦でソフトバンクのあげた5点が最高で、その他の試合はすべて3点勝負の展開だった。いや、それどころか2-1のロースコアでの決着が4試合もあった。だから攻撃面での凄さに驚かされ、心踊らされる場面はほとんどなかったのではないか。それに毎試合、面白いほどバットが折れた。そのたびにボクは両チームの投手力の凄さを見せつけられた思いがしていた。

 守備力も素晴らしかった。特に外野手が追いつけそうにない打球を好捕する場面が何度もあった。中日の小池・平田、ソフトバンクの多村・内川らだ。あれが抜けていたらと思われる場面で体を張った好プレーが随所で光った。そのようなスーパープレーの応酬が続いた末に、最終戦では中日のセンター、大島の惜しいプレーがきっかけとなってソフトバンクが先制点をあげ、均衡が破れた。

 ソフトバンクの長谷川が打ったセンターオーバーの打球にいったん追いつきながらも、大島はボールをこぼしてしまった。普通であれば抜けていた打球だったから大島を責めるのは筋違いだ。記録はもちろんヒット(2塁打)。でも名手、大島だけに捕ったかもしれないと一瞬思わせた。でも捕れなかった。このあと先発山井は次打者の山崎に四球を与えてノーアウト満塁とし、降板。ギリギリのせめぎ合いが続くなかで、中日守備陣がソフトバンク守備陣に力負けした瞬間だった。それほどレベルが高かったということだ。

 勝負を決したのは打撃力の差ではなかった。投手力・守備力といった中日のお株をも奪って優位に立ったソフトバンクが日本シリーズを制覇した。ソフトバンクのほうが役者が一枚上だった。そして、落合監督の「投手を主体とした守り勝つ野球」が日本のプロ野球界にパラダイム・シフトをもたらしたということが、皮肉にも相手チームによって実証された。

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2011年11月 6日 (日)

ガンバレ!オレ。

 努力は人に見せつけるものではなく、人知れずやるもの。ましてやそれを売り物にするのはカッコ悪い。

 そんなの結果を出している人は誰でも当たり前にやっている。

  100メートルダッシュを80メートルでやめて残り20メートルを流す人と最後まできっちりやる人。最後に笑うのは後者。

  練習は嘘をつかないというのは本当だ。練習でできなかったことが本番でできるはずがないというのも真実。

  今の自分にはツキがないとか、流れが向いてこないななんて思う時こそ原点に立ち戻れる自分でありたい。どこか浮ついたり怠けたりしている自分はいなかったか。

 人間は悔しいから生きている。満足したらそこで終わる。

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2011年10月21日 (金)

落合監督退任に想う

Photo 気がつけば前回から約1か月近く更新できないままでした。この間のボクの暮らしぶりを正直に告白すれば、その日の仕事を終えて夜9時頃に帰宅するとやおらTVをつけ、プロ野球の中日戦を放映しているチャンネルを探し、その日の試合結果を確かめる、もしくは試合後半の模様を観戦する。それが無理な日は夜9時45分頃からのNHKニュース9のスポーツコーナーで結果を見る、そんな日々でした。

 現金なもので、8月の首位ヤクルトと10ゲーム差がついていた頃は興味がなかったのに(ゆっくりテレビを観る暇もあまりなかったし)、いざ中日が物凄い追い上げを見せるようになってくると、毎日の結果が気になって仕方なくなっていたんです。

 そしてとうとう、今週の火曜日(18日)対横浜戦で引き分けてセ・リーグ優勝を決めました。翌水曜日(19日)にはヤクルトにも勝ち、正真正銘の自力優勝という形にもなりました。落合監督は退任の花道をみずから用意して有終の美を飾ってくれたわけです。ファンとしては本当に大感激の二連覇でした。

Photo_3 さて、多くの方がすでにご存じのことと思いますが、かねてより球団内部では落合監督と坂井球団社長との確執があったようです。ドラゴンズが9月に行われた対巨人戦に負けたとき、坂井社長はガッツポーズをとって喜んだのだとか。自球団の敗戦に喜ぶ社長というのも不思議な姿なのですが、どうやら伏線として球団の赤字経営を何とかしろとの至上命題を負っていた坂井社長が「これで落合を辞めさせられる」と思って喜んだ。つまり、この時の敗戦によって高額年俸の監督をクビにする口実ができたのでホッとしたということなんでしょう。

 
  こうしてもともとアンチ落合だった坂井社長に追われる形で落合さんは球団を去ることになりました。これまでの実績からすれば、また球団への貢献度を考えれば、その処遇はあまりに冷たいものです。中日球団にとって落合さんは最後までアウトローであり、外様(とざま)であったということも一因なのでしょう。

Photo_4 もっともその事を知った選手達が発憤して優勝を勝ちとったのですから、結果は球団にとっても選手達の今後にとっても良かったのでしょう。落合さんは1994年1月の監督就任の際に選手達にこんなことを言ったんだそうです。「おまえらは球団のために戦うわけじゃない、自分の生活を守るために戦うんだ」と。現役時代からたびたび所属チームのフロントと対立し、「オレ流」を貫いてきた一匹狼の落合さんが言いそうなことですが、これは「組織と個人」の関係においてなかなか核心を突いた言葉です。

 ウチの職場もそうですが、お偉いさんは組織のなかの個人に対して滅私奉公を求めます。でも、当の個人としては「組織のなかで一生懸命働いたことが報われるのなら、稼がせてくれるのなら従いましょう」というのが本音でしょう。

 ところが実際は、上層部では現場そっちのけで事業を継続するための資金繰りのことしか考えてくれない。これまでのような年功序列で賃金が高くなる年齢になると、いろんな手口で人件費のカットを迫ってくるわけです。

 信賞必罰の落合流では何より試合での結果が求められますが、結果を出した者は厚遇します。もとより厳しいプロの世界です。勝負の世界に生きる者にとって、栄誉と高額報酬というのは最も魅力的な待遇でしょう。それを手にするために頑張るというのはまっとうなモチベーションの在り方です。でも、そのことが選手達の年俸を高騰させ、球団経営を圧迫してきた。経営者としての坂井社長と現場の責任者としての落合監督の思惑が相反するものになってしまうのは仕方のないことです。

 おそらく球団幹部としては「あまり高くない年俸でそこそこ活躍して(盛りあげて)くれればいい」というのが本音なのではないかな。経営的にはそのほうがいいんだと。だから落合監督以前のドラゴンズは「万年2位」球団だったわけです。かつて10・8で巨人に敗れ、優勝はかなわなかったけれど、そこそこ盛り上げてくれた高木守道監督(当時)のような人が今の中日球団に求められる監督像なんでしょう。やっとわかってきました、なぜ今さら高木さんの再登板なのかということが。

 でもボクらファンは二番でいいなんて思ってません、一番じゃなきゃダメなんです。

 結局のところ「出過ぎた真似」をしてしまったわけですよ、落合さんは。それにしても一生懸命やって結果を出したことが逆にうとまれる世界というのも辛いもんですね。中日球団で采配をふるうことが落合監督にとって本当に幸せなことだったのでしょうか。「孤高の職人」を受け入れる度量の広さはもともと持ち合わせていない球団です。典型的な「ムラ社会」ですな。ボクが嫌いな「身内に甘く、よそ者に冷たい」世界ですよ。

 今にして思うと、そんなところで8年間、落合さんは本当によくやってこられました。その反骨精神はボクも見習いたいものです。冷遇された球団に最高の栄誉をもたらし、そして静かに去ってゆく。大人ですね、本物のプロですね。素人が下手にコメントできる世界じゃないのです。だからネット言論を賑わせている落合さんへの下世話な批評はもう止めましょう。

 プロとして勝負にこだわる姿勢をサポートしきれなかった球団幹部。もっとも世の中にはいたる所でこういった「経営者の事情と現場サイドの事情のすれ違い」が見られます。せっかくドラゴンズが優勝したのに、なぜこうも晴れ晴れしい気持ちになれないんだろう。ずーっと考えてきました。どうやら落合監督退任のてんまつは、ボク自身が今抱えている問題意識とダブっているようです。

 もっとも落合さんには実力があるけど、ボクには何もないですから、組織に無理難題を押しつけられても耐えるしかないんですけどね。でも、弱い者は弱い者なりの戦い方を探る必要はありそうです。故スティーブ・ジョブズも言ってたっけ、"Stay Hungry , Stay Foolish"ってね。「満たされていない」ってことは、実は大事なことなのかもしれません。

  ハングリー精神で明日を切り拓いて行けたらいいですね。

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2011年9月27日 (火)

中日ドラゴンズ論 / 今中慎二

Photo 中日球団は落合博満監督の今季限りでの退団を発表しました。契約満了の年とはいえ、これまで同球団にとっては半世紀ぶりの日本シリーズ制覇を含め、セ・リーグ優勝3回、これまで7年間、常にAクラスをキープしてきたことなど輝かしい実績を残してきた落合監督。そんな功労者に対して球団がとった態度はあまりに素っ気なく思え、このニュースを知った当初は不信感をもちました。

 佐藤球団代表は、そろそろ「新しい風」を入れたいとの意向を表明したようですが、だったら92年~95年途中までドラゴンズでの監督経験がある高木守道氏が再登板というのは理解に苦しむ人選です。それに今後、落合さんが他球団の監督に招聘され、ドラゴンズの敵になる恐れが出てきたことも脅威です。ボクは星野さんがタイガースに行っちゃった時以上の脅威になると思ってます。 

  そんなことを考えながら、かつてドラゴンズのエース・ピッチャーとして活躍した今中慎二氏の『中日ドラゴンズ論』を再読してみました。

 メディアのなかには、今回のシーズン途中での退任劇は落合監督の高額年俸が原因であるとか、落合野球ではゲーム進行に面白みがないため観客動員数が増えず、球団経営が苦しくなったせいだとか、ほとんど憶測に近い記事を書いたところがあります。

 今中さんはドラゴンズの強さを「プロとして当たり前のことができている」点に求めています。打撃は不振続きでも、ピッチャーを中心とした守りの野球でシーズン後半にはちゃんと首位争いの一角に食い込んでいる。勝つためにはメディアに対しても口を閉ざし、不必要にチーム情報を流出させない。大物選手を金で集めるようなことはせず、その代わりオフのキャンプでは12球団随一と言われる練習量をこなして鍛えあげ、毎年のように若手が頭角をあらわしてくる。

 身だしなみにも厳しく茶髪は禁止、グランドではだらだら動かない、ファンの前では敵チームの選手と馴れ馴れしくしない、裏方さんにも気配りができる等々。見た目も爽やかで凛々しく、しかも強いチームがドラゴンズなのだと。

 これまで落合監督は選手達に高いプロ意識を要求する一方で、トレーニングにおいては自主性を重んじてやってきました。プロなんだから各自が「オレ流」でいいじゃないかという考えなのでしょう。そして、ゲームで使えるレベルになった選手には、新人だろうが何だろうが1年目からチャンスを与えてきました。一芸に秀でた選手を上手に起用してその才能を伸ばす名人でもあったのです。

 今中さんに言わせると、高木次期監督も同様の野球観をもった方のようです。そういう意味では星野前監督とは違った意味で厳しく怖い監督なのだとか。また、最初から選手に教え込もうとするのでなく、考えさせる野球をするそうなので、落合監督の後任としては現時点でもっとも適任な方なのかも知れません。

 野田首相はかつて民主党代表選前の演説で、「私が代表になっても支持率はあがらないでしょう。だから解散はしません。」と述べました。それと同様に、高木新監督が就任しても中日球団の観客動員数はおそらくあがらないでしょう。高木さんも前任者同様、多くのファンにとっては地味で面白みのない「どじょう」のような野球をする方です。しかし、堅実に勝つ野球をしてくれることでしょう。誰が指導者になろうとも、最高のファンサービスは「ゲームに勝つこと」「優勝すること」に違いはありません。高木さんならきっとやってくれます。

 それにしても先週の対ヤクルト4連戦にはシビれました。あそこで連敗したら首位ヤクルトに追いつくのは難しくなったでしょう。しかし、例によってシーズン後半の勝負どころで負けない野球を徹底し、勝ち星を重ね、着実に追い上げてきました。これまで大幅に負け越していた相性の悪いヤクルトに3連勝(1敗)だったのですから、あっぱれとしか言いようがありません。

 落合監督は勝負どころで負けないチームを築き上げてきました。しかし、8年間指揮をとり続けるうちにアライバ(荒木・井端)の二遊間も、抑えの岩瀬も、正捕手の谷繁もベテランの域に達し、年齢とともにかつてのようには盤石でなくなってきました。球団代表が「新しい風」を採り入れようとするのも、最近のチーム事情を考えれば無理からぬところではあります。

 やはり将来の立浪監督擁立に向けた球団側の意向なのでしょうか。常勝軍団を作り上げたものの、落合監督はなぜか最後まで人気がありませんでした。球団経営を考えれば人気者の監督を立てたい気持ちもわからないではありません。ですが、ボクは落合監督を球団史上最強の名将だと断言します。ドラゴンズ伝統の戦術に倣い、最高の形で具現してくれたからです。あるいは大味な野球のほうが見た目に面白く、人気が出るかも知れません。でも、今のチームカラーは誰が監督になっても継承していって欲しいものです。

 8年間ご苦労さまでした。緻密な計算と秘めた闘志、そして有言実行。落合さんにはプレーヤーとしてはもちろん、マネージャーとしてもプロ根性を見せつけられました。こうなればファンとしては、なんとか今シーズンの最後を球団史上初となる連覇で飾って欲しいです。首位ヤクルトと2.5ゲーム差。きっとやってくれると信じています。

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2011年9月18日 (日)

ジャズ界は70年代リバイバルなのか?

Photo  この8月にリリースされた新譜。山中千尋の選曲の妙は今回も冴えわたっていて、そのセンスの良さにはまったく脱帽です。ソウル&ブラック・コンテンポラリーの名曲を集めたスタンダード集という謳い文句にも納得できます。音作りもどことなく70年代を彷彿とさせる感じ。特にピアノの音色は懐かしさをも感じさせてくれます。

 原曲のコンポーザーは、ホレス・シルヴァー、バート・バカラック、マルコス・ヴァーリ、レオン・ラッセル、キャロル・キング等々、まったくボクら世代にはツボですな。

 前作『フォーエバー・ビギンズ』3曲目収録、筒美京平の「サマーウェーブ」にもビックリさせられたけど、今回、ボクの一番のお気に入りはレオン・ラッセルの「ディス・マスカレード」です。ところでこの曲、スローナンバーなのにドラムのグルーブ感がやたら際立ってるんですよ。当の山中のピアノよりも存在感があるんです。一体誰が叩いてんだろ?と思って、あれこれ調べてみると、この曲と8曲目を叩いているのはバーナード・パーディーというドラマーでした。(これら2曲以外はジョン・デイヴィスのドラムです。)                                                                 

 ピアノのメロディーはオリジナルに忠実な、ちょっと意地悪く言ってしまうと何の変哲もない通俗的なもの。最初は、あれっ?山中らしくないなと思ったのですが、何度も聴いているうちにその理由が何となくわかってきました。ドラムやベースを引き立てるように弾いてるんですよ。この曲に関しては甘いピアノのメロディーをサポートしているドラムやベース(ラリー・グレナディア)が主役です。

  そこまで調べてから、ふとジャケットに目をやると、なぁんだ、ちゃんと書いてあるじゃないですか。「featuring  Bernard Purdie, Larry Grenadier」って。

  これは8曲目、キャロル・キングの「You've Got A Friend」に関しても同様です。リズム隊がカッコよく刻んでくれるので、曲の輪郭がハッキリしてくるんですね。控えめに弾いている山中のピアノの音色が俄然引き立ちます。曲は後半、コルトレーンの「Central Park West」へと自然につながっていきます。

Photo_2 それにしてもバーナード・パーディーのドラムがあまりにボクの耳に馴染むので、不思議に思って過去の仕事を調べてみると、この人、77年リリースのスティーリー・ダンの名作『aja(エイジャ)』のなかの2曲、「ディーコン・ブルース」と「安らぎの家(HOME AT LAST)」で叩いてたんですね。そりゃ、70年代の音楽をジャズで演るにはピッタリのドラマーなわけです。う~ん、なるほど。パーソネルに関してもなかなかの策士ですな、山中は。

 もうひとりのドラマー、ジョン・デイヴィスのほうも気に入りました。オープニングの山中オリジナル「Rain, Rain And Rain」や9曲目「La Samba des Prophetes」、ラストの「Can't Take My Eyes Off Of You」などアップテンポの曲では、小気味よいリズムで演奏に推進力をつけています。だから山中のオスカー・ピーターソンばりの早弾きも、これらの曲では思う存分に生かされてるように思います。

  というわけで、素晴らしいサポート陣の参加を得て、彼女のピアノがますます魅力的に響くアルバムが出来あがりました。また、アレンジにローズピアノのバッキングを加えたり、スクリャービンやガーシュインといったクラシックの名曲の旋律をこっそり入れた曲なんかもあって芸が細かい。

Photo_3  5曲目、マルコス・ヴァーリのジャズ=ブラジリアンワルツの名曲、「Ele E Ela(彼と彼女)〔youtube〕(70年リリース、『Marcos Valle』に収録)のピアノトリオ・アレンジもとってもオシャレでいい感じ。オーケストラ・アレンジの原曲もとっても好きだけど、山中のは生ピアノならではのしっとり感が秀逸です。

 また、『レミニセンス〔amazon.co.jp〕というアルバムタイトルは、「覚えた直後よりも一定時間が経ってからのほうがよく記憶を思い出せること」を表わす用語なんだそうです。タイトルも毎度、エスプリが効いてますよね。70年代をベースにジャズの新しい表現を模索しているようにも思えます。

  いみじくも彼女の前作のライナー・ノーツで岩浪洋三さんがこんなふうに書いてました。

 いまジャズ界では新しいジャズの名曲探しをしようという気運が高まってきている。バップやハード・バップ期にはたくさんのモダン・ジャズの名曲が生まれ、今でもさかんに演奏されているし、それは悪いことではない。しかし、それらの多くは誕生(作曲)してから、50~60年も経っており、多くの人が少し新しい名曲、新しい風がほしいと考えはじめていることもたしかなのだ。                                   

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2011年9月13日 (火)

日本は世界4位の海洋大国 / 山田吉彦

Photo 昨年9月7日は、尖閣諸島付近で不法操業していた中国漁船が、日本の海上保安庁の巡視船に何度も衝突してくるという事件があった日です。あの日以来、わが国は近隣諸国からの不法侵入や不法占拠に対して、自国の領海や排他的経済水域およびその海域の基準となっている島しょをどう守るべきかという課題を、待ったなしのものとして突きつけられたように思います。

  周囲を海に囲まれているわが国ですが、国民の大多数は陸上で日々の生活を送っていますから、はるか沖合に広がるわが国の海域について思いを巡らすなんてこともそうそうないでしょう。ところが、この海からボクらは実にさまざまな資源を得ることができるのです。そのことを山田吉彦さんの『日本は世界4位の海洋大国〔amazon.co.jp〕で知ることができました。

 日本の領海および排他的経済水域(沿岸から200海里=約370kmまでの海域)から得られる水産資源や地下資源などは、基本的に日本国に帰属します。これは国連海洋法条約(1994年発効)で沿岸国の権利として承認されているものです。

 わが国の領土は約37.8万平方キロメートル。面積では世界第61位に過ぎません。ところが、日本の持ち物といえる海域(領海とその外側に広がる排他的経済水域)については面積で世界第6位。深さも加えて海の大きさ=海水の体積でみると、1580万立方キロメートルで世界第4位になります。この観点からみると、日本はまさにアメリカ合衆国、オーストラリア、キリバスに次ぐ世界有数の海洋大国なのです。

 この広大な日本の海が近隣諸国にかすめ取られようとしています。尖閣諸島付近で発生した上記事件は、日本の海に不法侵入して泥棒まがいの不法操業をしていた中国漁船が、日本側に発見されて逆ギレしたというのが事の顛末です。ところが日本政府の対応は腰砕けで、日本の法に照らして漁船の船長を裁くこともしませんでした。自国の領域を保全することもままならないのですから、中国の漁師にもナメられるんです。

 もっとも日本の海が豊かだからこそ他国が目をつけ、奪おうとするわけなので、今の日本はその豊かさを生かし切れていないという現状こそが由々しき事態なのでしょう。

 エネルギー資源の乏しいわが国にとって、ここのところの国際的な原油価格の高騰は、経済成長を妨げるマイナス要因です。ところが、数百年先まで安心して使える大量のエネルギー資源を日本近海で獲得できるということはほとんど知られていないようです。

 海水の中にウランが溶け込んでいることをご存じでしょうか。これは福島第一原発から漏れ出たものの話をしているわけではありません。日本近海に流れてくる黒潮は年間約520万トンのウランを運んでくるんだそうです、つまり人間が排出したわけではないウランが自然の海水の中に含まれていて、原発500年分のウランを毎年日本近海にもたらしているんです。

 この海中のウランをどうやって捕集するかという研究において、日本は世界の最先端を走っているそうです。日本が開発した、モール状捕集材に吸着させて海中のウランを回収するやり方は、コスト的にも実用に見合う段階まで来ています。今後、鉱山で生産されたウランの国際価格が高騰することが予想されるため、もしそうなれば価格面でも十分対抗できるということです。

  現在、日本では「脱原発」派が勢いづいていますが、エネルギー政策の再構築を進めようとしている現政権のもとで、日本は近い将来、国内で必要とされるエネルギーを100%自給できるようになる、それどころかエネルギー輸出国にもなり得るというこの可能性を簡単に捨て去ってしまっていいものでしょうか。原発問題はデリケートな話題ではありますが、このことは国民的議論のなかで真剣に検討する必要があるとボクは思います。

 次に別のエネルギー資源の話をします。水の分子の中に天然ガスのメタン分子が取り込まれ、シャーベット状になったものが日本近海の深海底に眠っています。2005年の愛知万博でも話題になった燃える氷、メタンハイドレートです。このエネルギー資源、存在自体は19世紀末には知られていたようですが、回収コストがかかり過ぎるため、まだビジネスベースには乗っていません。でも、こちらも採掘技術の進歩などによって将来実用化する可能性は大いにあります。日本の領海および排他的経済水域内の海底には、推定で日本の天然ガス消費量の94年分相当が眠っているという研究論文もあります。

 わが国の悲願といってもいい「エネルギー完全自給」。その可能性を秘めているのが日本の海なのです。これらは海の活用のほんの一例に過ぎません。日本近海は実にさまざまな資源の宝庫なんですね。

  ところが、日本政府には海洋政策に関わる省庁が8つ(国交省・海上保安庁・農水省・財務省・外務省・経産省・防衛省・環境省)もあります。そのため長いあいだ政策の統一すらできずにいました。ですので、海洋基本法(2007年成立)による日本近海の海洋開発・利用促進の動きは、近年ようやくその端緒に就いたばかりなんです。

  ここは是非、リスクを取りたがらない民間企業を上手にエスコートしながら、政府主導で進めていただきたいものです。エネルギー産業の創出・育成や成長戦略といった日本経済の根幹に関わる部分でもありますから。でもその前に、わが国の領域(領土・領海・領空)の保全に全力を挙げて欲しいですけどね。。。

 海はもはや、日本の将来にとってわずかに残された「希望」なのではないでしょうか。 

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2011年9月10日 (土)

最近のボクの英語学習

Photo これまでにもいろんな書籍から英語学習に関するヒントを得てきましたが、最近は斎藤兆史(さいとう よしふみ)著『英語達人塾〔amazon.co.jp〕の影響で、まとまった英文をくり返し音読するというトレーニングをひたすらやっています。

 ここ数年は多読を中心に英語学習を組み立てていたボクとしては、どうも多読三原則のうち、「難しい単語はとばす」というのに引っかかりを覚えていました。いつまでもこれをやっていたのではイディオムが頭に蓄積されないのです。最近はそのことに焦りを感じていたので、ここで一度やり方を見直してみました。

 もとより日々の生活のなかで英語学習に使える時間は限られています。一定期間多読に励むのは確かに英語力の土台を築くのに良い学習法なのですが、これまでにもう500万語ほどは読んでいるので、そろそろ多読に充てる時間は短めにして、イディオムの充実と会話練習に力を入れようと思い立ったのです。

Nhk 今、音読のテキストに使っているのは、NHKラジオ講座のテキストです。いわば原点に立ち戻った感じなのですが、1日約30分、おもに寝る前にウォークマンに取り入れておいた音声を流し、それを追いながら音読する。いわゆるシャドウイングというのをやってます。初めのうちはテキストを見ながら、慣れてきたらテキストを見ずにやったりします。

 ウォークマンに音声を入れておくと、どこでも聴けますし、リピートが簡単にできるので便利なんです。 

 恥ずかしながら、テキストとCDは2003年度のものを押し入れから掘り出して使っています。買ったまま置きっぱなしになってたんですね。それにしても8年前のテキストを2011年の今頃使っているなんて、世の中広しといえどもボクぐらいのものでしょう。講師は岩村圭南(いわむら けいなん)先生の時代のものです。

 改めて使ってみるとこの教材、至れり尽くせりなんですね。何かの雑誌で読んだのですが、「これだけ趣向を凝らしているのに続けられないのなら、何をやってもダメ」なんてハッキリ言う人がいるくらい、テキストは実に丁寧な作りで安心して学習に取り組めています。対費用効果で考えても、これほど優れた教材はそうそうないでしょう。

  音読の素材としてみたとき、ある程度まとまった文章で、正しい英文で書かれているもの。内容そのものを楽しめるもの。NHKラジオ講座のテキストはこの点でも安心感があります。ボクはこれを繰り返し繰り返し音読しながら、修行のような会話トレーニングをほぼ毎日楽しく続けています。もちろんイディオムは文章の中に出てきたものを覚えます。もうこの学習法で半年続いていますから、これは本物でしょう。やはり「迷ったら基本に帰るべし」というのは至言ですね。

  あと、多読では確認できない単語の正確な発音と英語を話すリズムも、音声付きの教材を音読することで身につけられます。月並みですが、多読と並行してNHKラジオ講座をやるのは本当におススメの英語学習法だと思っています。

  そして、このやり方をもう1年半ほど続けたら、いよいよ次は文法をしっかりやり直したいと思います。文法学習は英語学習の過程で避けては通れない関門のようです。これをしっかりやっておかないと、読む・聞く・話す・書くの総合的な英語力が伸びないのだとか。

Photo でも、これでようやく英語学習の基本の形が見えてきたような気がします。順序を間違えずにひとつひとつトレーニングを積み上げていけば、いつかきっと英語の達人・・・ほどではないにせよ、自分なりに満足のいく英語力を身につけられると信じています。あとは継続することですね。

  あ、多読のほうは相変わらずコレ中心でやってます。こちらも記事の一部は音声付きなので重宝します。

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2011年9月 1日 (木)

脳は鍛えるな! / 酒谷 薫

Photo  この8月のお盆に半年ぶりに弟と会った。名古屋で会社勤めをしている。中間管理職の気苦労の多さをさかんに愚痴っていた。何でも半年で10キロも体重が増えたのだとか。弟には悪いが動きも緩慢だし、やたら汗ばんでいて、とても不健康そうに見えた。仕事上のストレスが原因だと言う。実際そんなところなんだろうけど、これは他人事ではない。

  ボクも感じているのだけど、40代にもなると仕事上のストレスは、もっぱら美味しいものを飲んだり食べたりして発散する。一方で、長時間過重労働がストレスがたまる主因なので、適度な運動で発散することがなかなかできない。

  このままじゃヤバイに決まってる。わかってはいるのだが、そもそも仕事以外のことにあまり時間をかけられないのだから、どうしようもない。現代はストレス社会、きっと同じような悩みを持っておられる中年の方もたくさん居るに違いない。

 このような問題意識から『脳は鍛えるな!〔amazon.co.jp〕という本を手にとってみました。著者は「脳の健康外来」を日本大学医学部付属板橋病院で始められた酒谷 薫(さかたに かおる)教授。この外来は、ストレスによるさまざまな脳の病気を予防することを目的とした、日本で最初の外来なのだそうです。

  ストレスは身体だけでなく、脳細胞にもダメージを与えるのだそうです。特に脳の中心部、大脳辺縁系にある海馬(かいば)と呼ばれるところの脳細胞はストレスにやられると委縮してしまうのだとか。

  海馬は記憶や学習機能をつかさどる重要な場所なので、ストレスが傷害すると物忘れが増え、ひどくなると日常生活にも支障をきたすようになるのだそうです。こうなってしまうと、もう仕事どころではありません。

  また、ストレスで疲弊し、機能が低下した脳ではセロトニンと呼ばれる神経伝達物質の分泌が少なくなります。これは心をリラックスさせる脳内物質なので、分泌が少なくなるとやがて気分は極端に落ち込み、生きる意欲がなくなってきます。この状態が「うつ病」。

  たとえどんなに精神的にストレスに強い人でも、過剰にストレスを溜め込んでしまうとこのような症状に陥るようです。そもそもストレスに強いというのは、単にキャパシティーが他人よりも大きいだけのこと。むしろ気づいた時には手遅れという危険なタイプであるようです。

 酒谷先生は日本人はとくにストレスをためやすい国民性だといいます。例えば「肩こり」というのは日本人特有の症状なのだそうで、これは周囲を気にしながら行動し、過剰に全体の「和」を保とうと頑張ってしまうためにおきるのだとか。さらに効率化を求め過ぎる生真面目な日本人は、ラテン系のおおらかなライフスタイル、すなわちスローライフを採り入れたストレス解消法が効果的であるなんてことも書いています。

  どうやら弟もボクも、さまざまな精神障害、脳の機能障害を患う前に、溜め込んだストレスを発散させることを真剣に考える必要がありそうです。ではどうすればいいのでしょうか?こんなときに「脳トレ」などで鍛えようとするのは逆効果なんだそうです。

  酒谷先生がこの本で勧めているのは、「アロマセラピー」、「坐禅」、「女性には化粧」、「男性にはオシャレ」、「仲間とおこなうエクササイズ(スポーツ)」、「ツボマッサージ」、「森林浴」、「海岸での散歩」、「朝日を浴びる」、「起きてすぐにテレビのスイッチを入れない」、「お風呂に入る」、「洗面所で過ごす時間を長くする」、「通勤時にいつもと違うことをする」、「腹式呼吸」などです。これらがなぜストレス脳に効くのかは、実際にこの本を読んで確認してみて下さい。治療費よりも格安ですから。

  また、食事に関して勧めているのは、脳内セロトニンを増やすためにトリプトファンという必須アミノ酸をしっかり摂取することです。トリプトファンはバナナ、大豆、牛乳、肉や魚などタンパク質の多い食材に豊富に含まれているので、これらを炭水化物やブドウ糖とバランスよく摂取することが大事なのだとか。なぜなら、血液中のトリプトファンが脳内に移行するために炭水化物やブドウ糖が必要だからなのだそうです。

  とにかく脳をリラックスさせ、五感を介して適度な刺激を与えたり、栄養を与えたり、気分転換させたりすることがイイみたいです。これなら今の生活習慣を大幅に変えなくても、出来そうなことはたくさんあります。

  ボクはこの8月には「諏訪湖畔でジョギング」「温泉に行く」「森林浴」といった実践を意識的に採り入れてみました。多忙のため回数は少なかったのですが、おかげでひと頃に比べてずいぶんストレスが解消されました。次は「アロマセラピー」も試してみようと思っています。これなら家にいながら短時間でできるしね。

  やはりストレス対処法は「スローライフ」の実践なのでしょう。そんなこと言われたってどうせ無理だと思わずに、ストレスに悩むみなさんは、少しでもいいからリラックス、あるいは気分転換できる時間を作る工夫をしてみるといいですよ。

  弟にも教えてあげなきゃ。

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«『神様のカルテ』(監督:深川栄洋)